忘れられない夏の思い出。
理容師のオンラインサロンBarber-barの中で、これをテーマにみんなでブログを書こうということになりまして。いわゆる「お題ブログ」というやつです。与えられたお題に対して自分なりのブログを書くんです。
そうなるとみんな鉄板ネタをぶつけてくるはず。僕も負けられません。
なのでここは僕のとっておき、「高3の夏休みにクラスのマドンナに3回告白してついに付き合ってめっちゃ羨ましがられた話」をしようと思ったのですが、
よく考えたらそんなのとはまるで無縁の汗臭い高校生活しか送ってなかったので、かわりに「夏にBBQやって食中毒になってめっちゃ下痢した話」をします。
ヌメヌメの蟹
誰からも言われたことはないが遅咲きのゴールデンルーキーとして理容界に飛び込んだ23歳の夏、初めていただいた4日間の夏休み。
その最終日たる4日目、僕は大学時代に心血を注いだレストランのバイト仲間とともにバーベキューに行った。
業界一年目で毎日が目まぐるしく過ぎ、しかも僕がお世話になった修行先のお店は「これ、町中の男性全員がこの店に来てんじゃないか?」ってくらいに忙しいお店であり、僕は疲れ果てていた。
そのせいか、バーベキューには行ったものの、僕はその時間のほとんどを寝て過ごしていたのを覚えている。
そんな中、僕が担当となった「カニの味噌汁作り」というミッションだけは遂行した。
火起こしに手間取ったので、冷凍のカニが長時間夏の日差しにさらされ、お湯が沸いた時にはだいぶヌメっとした触感になっていたが、どうせ煮込むので大丈夫だろうと自分に言い聞かせ、それを黙って手に取りそっと鍋に入れた。
カニはしっかり煮沸消毒され、幸運にもヌメリ蟹の味噌汁を飲んだ仲間たちは誰も調子を崩すことはなかった。
ただひとつ不運だったのは、そのヌメリ蟹を直接手に触った僕だけが食中毒となってしまったことだった。
室長、変調をきたす
翌日は営業再開日であり、僕はバーベキュー後寮に戻り、いつもと変わらず床に就いた。
すると朝の5時ごろだったか。ちょっと経験したことのない吐き気と腹痛で目が覚めた。
一度寝たらアラームが鳴るまでは決して起きないことにかけては誰よりも自信があった僕としては、これは事件レベルの変調だ。
考える間もなく寮のトイレ(これがまたすごく古風な石造りの和式便所だったなぁ、、)に駆け込んで上から下からリバースした。
酒を飲まないし乗り物酔いもしない僕からすると、吐くということが日常にないので、そのことに免疫がなく、「寝起きdeいきなりゲロッティ」というのはもう確実に緊急事態であることを意味する。
「やばい、、、なんだこれ、、、」
僕は当初、休みを満喫しすぎて体と心が拒否反応を起こしてるのかと思った。
就職一年目の夏休みの最終日といえば、壮絶なサザエさん症候群、それも相当にブルーな、ディープマリンブルーサザエさんを経験したことのある人は多いだろう。僕はそれの強烈なやつだと思っていたのだ。
フラフラな状態ながらそれでもお店に向かい、開店前の準備と練習を終え、開店を迎えた。
休み明けで当然お店は忙しく、開店と同時に椅子も客待ちスペースも満員となった。
最初は師匠の後ろに立ち仕事をいつも通り見ていたが、吐き気と腹痛とめまいで立っていられなくなり、「すみません、トイレに行かせてください」と告げ、トイレに行くとその前で力尽きた。倒れて動けなくなったのだ。
驚きの診断
「こんなとこで寝てても良くならないわよ」
師匠の奥様より厳しくも温かい叱咤激励をいただき、僕は病院送りになった。
そして医師に診断された病名が、僕を含め周りの方々に激震を走らすこととなる。
その病名は「O-157 腸管出血性大腸菌」だった。
O-157。聞いたことのある方も多いのではないだろうか。場合によっては死に至る伝染性の病原性大腸菌だ。当時はかなりニュースになっていた頃で、毎日のように『○○市で何名、△△区で何名』と発生者が出ると報道されていたし、使った部屋やトイレが真っ白な粉で消毒される映像が流れていた。
続けて医師は「古澤さん、今日このまま隔離入院ですね。これ伝染性なので。帰宅できませんよ。それとここまでに使ったトイレとバーベキューに行ったお友達を教えてもらっていいかな?」とまくしたてた。
使ったトイレは寮と店の裏のトイレだけだったので良かったが、バーベキューに行った仲間はみんなレストランで働いてて生活がかかってるので迷惑かけられない。
しかし「僕一人で行きました」と言っても信じてもらえるはずもなく。仕方なく親友の男一人を巻き沿いにすることにし、彼の名前を挙げた。真夏に男二人で河原でバーベキューという何とも勘違いされそうな独自の世界観を作り上げることで、僕はその場を乗り切った。
室長、恥辱にまみれる
入院生活は隔離状態のため病室の外に出ることはできないというものだった。
当然トイレも隔離部屋の中に置いてある簡易便器で済ませることになる。便が出たらすぐに看護師さんを呼び排泄物を処理してもらわなければならないのがルールだ。
水洗ではないのでニオイは部屋中に充満する。隔離部屋なのに窓を全開にして達也の残り香を全力で追い出し、申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちでどうにかなりそうな心境で毎回看護師さんを呼んだ。
しかも何がつらいって、この手の「しゃーーー」と出るタイプのウォーターなやつは一度出ると立て続けに出ることだ。看護師さんを呼び片づけてもらった後、すぐにまた便が出てしまい「ほんとにすみませんが、、、、」と連絡をしなければならない時などは、弱りきってしっかり蓋ができない我が黄門様を心底恨んだ。
そんな辱めにさらに追い打ちをかけたのが、「菌がまだ大腸にいるかどうかを調べる検査」だ。
看護師さんがおもむろに「はい古澤さーん、ケツ出してくださーい」と言いながら部屋に入ってきて、問答無用に尻に棒を突っ込まれる儀式がそれだ。
この棒に悪い大腸菌が付着するかどうかを調べるらしく、菌が付かなくなるまで退院はできない。
二回目にケツを出した際、あまりの恥ずかしさに「それくらいなら自分でやります」ととても建設的な意見を凛とした口調で看護師さんに投げかけてみたが、「あ、ダメでーす。これはあたしやりまーす」とあえなく却下された。
そりゃそうだ。看護師さんからしたら、伝染性の大腸菌を腸に飼ってるリアルバイキンマンのような男をおいそれと野に放つわけにはいかないのだ。
僕はその看護師さんの仕事への厳しい姿勢に感銘し、おとなしくケツを差し出すことを決めた。
結局入院中に計3回棒を黄門様に突っ込まれた。一応言っておくが、僕の中に特に新しい世界への扉が開かれることはなかった。とにもかくにも恥ずかしい、ただそれだけだった。
室長、仕事の厳しさを知る
入院は9日間で終わりを告げた。お盆休み明けの忙しい時期だっただけに本当に申し訳なかった。
休みの間にやってしまったことであり、自己管理不足という他なく、お店に穴をあけ大迷惑をかけてしまい、業界一年生の僕には仕事というものの厳しさを知るきっかけにもなった。
とにかく僕らは体が資本なのだということ。
健康でなければ何もできないんだよということ。
ヌメヌメしたカニは素手で触っちゃダメだよということ。
その後の理容師人生で大事なことをこの時学ぶことができ、僕にとっては忘れられない夏となった。
みなさんにも忘れられない夏はきっとあるだろう。是非お店で聞かせていただければと思う。
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投稿者プロフィール
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昭和33年創業「古澤理容館」の三代目、現在は、癒しメニュー特化型理容室「理容フルサワ~LIVINGROOM~ 」室長。1973年生まれ、出身・在住ともに横浜市鶴見区。全理連ヘアーカウンセラー。2010年横浜市優秀技能者賞受賞。
理容師の為のオンラインサロン『Barber-Bar』主宰。
顔そりやヘッドスパなどの「癒し」に特化したサロンコンセプトのもと、ストレス社会に生きる現代人の疲れや肌荒れと向き合っている。特にメンズ向けのシェービングは「顔そりという名のエステ」として圧倒的な心地良さをもたらし、その独自の顔そり術は評判を呼び遠方からの来客も多い。
活動理念は「顧客様の日常に笑顔が増えるお手伝いをする」。顔剃りとヘッドスパでお客様を眠りに誘うことがやりがい。
ブログは15年以上続けており、ライフワークとなっている。
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